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「…はい。では、確かにお預かりします。」

そういう商会管理局の受付は顔馴染みだ。
僕たちの商会は、事務作業は手が空いている者が行う事になっている。
なので、商館に入り浸る事の多い僕は、必然的に商会の諸事務をこなす事も多い。
そうして商会管理局に通っているうちに顔馴染みになったってわけだ。
いつも仏頂面なんだけど、偶に見せる笑顔は結構な物だ…男だけど。

「うん、ありがと。入れるのはいつからだい?」
「そうですね、清掃から御自分でなさりたいのでしたら、今すぐにでも。」
「…きれいな状態で入れるのは?」
「大体2日後ですかね。清掃員に発破をかければ明日には入れるかもしれませんよ。」
「なるほどね…ありがと。」




しっかり2日の後、僕は指定された建物に荷物を運び込んでいた。
その建物は商館通りにあり、我らが6番商館も目と鼻の先という好立地。
間取りも狭くなく、広くなく、僕の身にはちょうどいい広さだ。
そのくせしっかりと倉庫の空間は充実しているという有様、はっきり言って破格の物件。
商館持ちの商会だと、ここまで優遇されるものかねと苦笑してしまう。
ともあれ、ここが僕の新しい王国となるわけだ。
以前は船の上で交易品を相手にしていたわけだけど…これからはここでお客を相手にする。
そう、初めて開く僕の…僕だけの店だ。

船は港湾管理局に預けて、船員も全員暇を出した。
皆口々に店に立ち寄ると言ってくれたけど、今頃は別の船の上だろう。
生きていればそのうち会えると思ってはみるものの、やはり少し寂しい。
身辺の整理も済ませ、必要なものをヴェネツィアから運び込んで…。

「そんなわけだから、お前さん方も他所へ行っていいんだよ?」

そう言葉を吐きながら振り返った先には、副官のフランシーヌとシャルロットが立っていた。
どこから持ってきたのか、それぞれ両手に鞄を抱え込んでいる。

「私たちの船長はあなたです。」
「それは何度も聞いたよ。でも今の僕は船長じゃない。」
「でも…だからって突然さよならってないよ!!」
「ちゃんとウチの商会秘書に話は通しておいただろ? 雇ってくれるって言ってたじゃないか。」
「私たちはあなたの技術を身につけたいんです!」
「あのねぇ…。ここナポリには、僕くらいの職人は吐いて捨てるほどいるの。おわかり?」
「「わかりません!!」」

本日何度目になるだろう、僕は深々と溜め息を吐く。
朝からこの調子だ。帰れ、帰らない、雇え、雇えない…延々とこの繰り返し。
何もかもが初めてづくしの事で、先の見通しも全く見えてない。
なのにこの上2人も雇えと? そんなリスクの高い事は到底できない!
もし万が一路頭に迷う結果にでもなってみろ、彼女達の責任は取れるのか?
故に、良心がいくら痛もうとも、僕は彼女達を受け入れるわけにはいかないのだ。




「だからね、何度も言ったとおり僕にお前さんがたを雇う余裕はないんだって…。」
「あら、雇ってあげればいいじゃない?」

その言葉に入り口のほうを見る。
するとそこには、コリナが微笑みながら佇んでいた。
手にはいつものバスケット、多分中身は開店祝いの御馳走だろう。

「通り中に響き渡ってたわよ、貴方達の押し問答?」
「…面目ない。でも、本当に雇う余裕は…。」
「あら、雇う=この店で働くという事にはならないわよ?」
「ユール、貴方下職ってご存知?」

そういって悪戯を思いついたかのように笑うコリナ。
そんな彼女に、僕たち3人は顔を見合わせるばかりだ。

「ま、ユールは上から下まで全部自分でこなすから知らないか…。
 本来の仕立て職人は、それぞれ得意分野があるの。
 シャツならシャツ職人、ズボンならズボン職人といった具合にね。
 短い生涯のうちに、何分野も極める事は不可能なのよ?」
「…ま、僕の場合は半分趣味だからね。極めるには至らなくてもいいさ。」
「まぁまぁ…。で、そんな職人達に自分の分野じゃない依頼が舞い込んだ場合どうするか。
 そんなときはお互い仕事を融通しあうのよ。これが下職。
 ここまで言えば、勘のいいお嬢さん方にもお分かりじゃない?」
「つまり、私たちは船長の下職として…?」
「御名答。」

確かにいいアイデアだ。
彼女達は僕の仕事を見る機会に恵まれ、僕は仕事の分散を図ることができる。
長い船上生活の中で、彼女達の技術が高い水準にあることは既に理解しているし。
しかしだ…。

「いやいや、そのアイデアだと普段はどうするんだよ。僕の店に二人が住むスペースはないよ?」
「あら、私を誰だとお思い? 天下の商会長様よ? 人二人商館に間借りさせる事くらいわけないわ!」
「そ、それに仕事だって…!」
「そこは既にユールが秘書に話をつけてるでしょう? 普段はうちの商館で働きなさい。」
「…。」
「いいわね、下職が目と鼻の先! 楽できるわねぇ、ねぇ?」

反論する言葉が見付からない。
対する女性陣は、勝負ありといった表情でこちらを窺っている。
っていつから論戦になったんだ! おまけに相手まで挿げ変わってるし!
そんながけっぷちの僕に、更なるコリナの一言が止めとなった。

「甘いわね、女に口で勝とうなんて。そして、女は女の味方よ。」





ナポリの広場を抜け、商館通りまで来て下さい。
広場から工房のほうへ歩きながら、右手の建物を数えて6つ目。
そこに、最近開店した仕立て屋があります。
屋号は『ユール縫製店』、小さな店だけど丁寧な仕事が評判だとか。
しかしこの店、いつ見ても店主が不在。
その代わり、扉にはこんな札が下がっています。


『只今店主外出中。
   御用の方は6番商館までどうぞ。』





はいどうも。
そんなわけで、ユールの航海はお休みとなります。
いやまぁ、分かる人には分かるでしょう? 年度末だし。
そりゃ23時に帰るのが気が引けるでしょう? 年度末だし!
だって休日返上するでしょう? 年度末だし!!
…体を休める時間を下さいorz

ってわけで、年度末の大忙しで毎日帰りが日付変更寸前か日付変更後。
休日出勤もしないとお仕事が間に合わないので、ログインする暇もありませんです。
一気に忙しくなったので何も言う事もできなかった+ブログ更新する事もできなかったのは真に申し訳ない。
だがまぁ、こういう事情なのです、って事で、しばらくユールさんのことは忘れて下さい。
嘘です、忘れないで下さい。毎日話題に出してください。寂しいとユールさんうさぎは死んでしまうのです。
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|03-20|落描きコメント(3)TOP↑
この記事にコメント
ムリしないでねー;w;
年度末はどうしてもそうなるよねぇ;w;
ムリして倒れてしまわないよう気をつけて!

戻ってきたらお店開店させてくださいねw
高級染料、最高級染料抱えてお待ち申し上げておりまふ(*´-`)
From: コリナ * 2009/03/20 08:31 * URL * [Edit] *  top↑
キャンディマンは5回なので
毎日鏡に向かって、ナッシーの名を6回唱えます。
From: Dolores * 2009/03/20 15:19 * URL * [Edit] *  top↑
なるほど、木曜市に主催者不在だったのはそういうわけだったのか・・・と、ペギソもしばらく不在だったのでこうしてブログ覗きにくるのも久々だったりするわけじゃけども!

木曜市は新しい顔もちらほら。なんとなく人数増えておるような気がしないでもないじゃよ。一応近況報告のう。
From: ペギソ * 2009/04/05 15:06 * URL * [Edit] *  top↑
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ユールクース

Author:ユールクース
大航海時代オンラインはZephyrosサーバーでふ~らふら。
天下御免のお針子野郎ここに極まれり。
最近ナポリ近海でよく見かけるとか見かけないとか。

ナポリ木曜市協賛店舗

ユール縫製店/ワタクシことユール
お食事処ペギソハット/ペギソ
五香粉酒家/コリナ
フェルディナン海上運輸/逝けメン様


詳しくはこちらを参照のこと

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